内容

地図は、人々の想像力を強く支配する。ほとんどの人は、地図に表現されたものには根拠がある、つまり地図にあるものはその場所にあると考えている。ところが地図製作者はみんな、地図に何を含め何を含めないのか、そして世界をどう上手く表現するのかを決断しているのである。地図はストーリーを伝えるものであり、地図製作者はそれをどう物語るのかを選んでいるということだ。

<序文より>

◆小学3年生が自由に描いたポートランド

子どもたちに見えている街の風景は?



あなたが暮らしている都市や地区、街路がどのようにあなたを形作っているのか、ぜひ考えてみてほしい。触れないもの、見えないもの、そして失われたものを、地図に描くことをお勧めしたい。……さあ、『ポートランド地図帖』を楽しんで……そして、歩きに出かけよう。

<日本語版への序文より>                                                                                                  

◆街を埋め尽くす監視カメラと、それを避けるルート

この地図が意味するポートランドらしさとは?



描くことによって自分自身とその場所とのつながりが「見える」ようになるもの、それこそが本書で強調されている「地図」である。したがって、それを集めた「地図帖」は、大勢の人がそれぞれに思い描く場所と自分とのつながりを記した、グラフィカルな街の物語になるはずだ。そういう意味で、一面的ではないその場所「らしさ」を探索する試みは、あらゆる都市や地域で可能な実践でもある。

<訳者あとがきより>        

◆家の間取り図に見立てたポートランド

ポートランドの居間はパイオニア・コートハウス・スクエア。パール地区はダイニングルーム。

では客室や裏庭、屋根裏部屋は?



(著者)

デービッド・バニス(David Banis):

2006年からポートランド州立大学地理学科の空間解析・調査センターを運営。地図学や地理情報システムの授業を担当する。市民参加型の地図製作に注目し、地図学者が地図によって物語を伝えるための多様な方法を探求している。 


ハンター・ショービー(Hunter Shobe):

ポートランド州立大学地理学科准教授。専門は文化地理学。オレゴン大学にてPh.D.(地理学)を取得。人々が様々な場所とどうつながり、意味を創造するのかについての文化的・政治的次元を研究している。